アメリカのファッション業界では、近年「オールサイズ」（全サイズ対応）のブランドが増えています。これは、単なる一時的なトレンドではなく、社会全体の変化や市場の需要に基づいた大きな動きです。本記事では、なぜアメリカがオールサイズのファッションに注力するのか、そして成功したブランドの例を紹介します。
アメリカがオールサイズ・ファッションを推進する理由
1. 多様な体型を持つ国民性
アメリカは移民国家であり、人種や文化の多様性が非常に高い国です。そのため、一般的な体型の範囲も広く、従来の「標準サイズ」だけではすべての人に対応できません。
2. ボディポジティブ（Body Positivity）運動の影響
「自分の体型を受け入れ、ポジティブに生きる」というボディポジティブ運動がアメリカでは広く普及しています。特に、SNSの普及により、個々の体型を肯定するムーブメントが強まり、ブランドもそれに応える形でサイズ展開を広げています。
3. 巨大な市場規模と経済的メリット
アメリカでは、多くの消費者がいわゆる「プラスサイズ」（標準より大きいサイズ）を必要としています。実際、プラスサイズ市場だけでも数十億ドル規模と言われ、企業にとって無視できない市場となっています。
4. インクルーシブ（包括的）な社会への移行
近年のアメリカ社会では、多様性と包括性が重視される傾向にあります。ジェンダーや人種だけでなく、体型に関しても「すべての人がファッションを楽しめるべきだ」という価値観が広がっています。
5. SNSと消費者の影響力
InstagramやTikTokなどのSNSでは、消費者がブランドに対して直接意見を発信できる時代になりました。その結果、サイズ展開が狭いブランドは批判を受けやすく、逆にオールサイズ対応のブランドは支持を集める傾向があります。
オールサイズ戦略で成功したブランド
Skims（スキムズ） – キム・カーダシアンの下着ブランド
キム・カーダシアンが手掛ける**Skims（スキムズ）**は、ボディポジティブの流れを代表するブランドのひとつです。Skimsは、XXSから4XL以上の幅広いサイズ展開を行い、すべての体型の人が快適に着られる下着を提供しています。また、広告キャンペーンにはさまざまな体型のモデルを起用し、消費者に「どんな体型でも美しくいられる」というメッセージを発信しています。
このアプローチが大成功し、Skimsは設立から数年で数十億ドルの企業価値を持つブランドへと成長しました。
Good American（グッド・アメリカン） – クロエ・カーダシアンのデニムブランド
キム・カーダシアンの妹、クロエ・カーダシアンが共同設立した**Good American（グッド・アメリカン）**も、オールサイズのファッションで成功したブランドの一つです。特にデニム製品に力を入れており、サイズ00（最小）から32（プラスサイズ）まで、すべての体型にフィットするジーンズを提供しています。
Good Americanは「誰もが完璧なジーンズを見つけられる」というコンセプトを掲げ、オンラインショッピングの際にも、異なる体型のモデルが同じジーンズを履いた画像を掲載するなど、ユーザーが自分の体型に合うデザインを選びやすい工夫をしています。
日本のファッションとの比較
アメリカがオールサイズ戦略を進める一方で、日本ではまだ「標準サイズ」に重点を置いたブランドが多いのが現状です。これは、文化的な美意識や、体型の分布が比較的均一であることが影響していると考えられます。しかし、近年ではユニクロやGUなどの一部のブランドが、より幅広いサイズ展開を取り入れ始めています。
日本の市場も徐々に変化しており、特に若い世代の間では「自分に合ったサイズを選びたい」というニーズが高まっています。今後、アメリカのようにオールサイズを意識したブランドが増えていく可能性もあるでしょう。
まとめ
アメリカでオールサイズのファッションが普及した背景には、多様な体型の消費者層、ボディポジティブ運動、市場規模の大きさ、社会全体の包括的な価値観、SNSの影響といった要素があります。SkimsやGood Americanのように、サイズを限定せずにすべての人に向けた商品を展開するブランドは、大きな成功を収めています。
日本でも今後、こうした流れが加速するかもしれません。消費者のニーズに応えるために、より多様なサイズ展開を行うブランドが増えることを期待したいですね。
